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る操舵カと風力が均衡することにより針路は安定するが、どちらの制御系も方向舵に当て舵を与えていないため風下に流される量が大きい。横風により航路から風下に流されるのは航空機と同様であるが、高度余裕が少ないため横傾斜を大きくとり風力に対向するのは安全性から見て問題がある。また方向舵による当て蛇は、横運動(Roll角)との達成から注意深い操舵を必要とする。WISESシステムを比較すると、制御システム-2が風による横流れを許して、加速度、姿勢角の変化を抑える制御をしているため、制御システム-1と大きく差が出ている。どちらのWISESシステムも航路帽無制限の海域であれば良いが、港湾付近の海域では航路を保持する対処(例えば当て舵)が必要である。
(2)高度(ze)
高度(重心位置)は振幅2〜3mの上下動を繰り返す。横傾斜(φ:Roll角)が大きくなり主真端が胴体下面より低下することにより、船体最低高度は重心位置での高度よりも大きな振幅となる波(Wave)のデータと合わせて見ると、波の上下動と高度変化概略一致することに注目して欲しい。航空機と異なり、海面すれすれを航行するWISESは波の影響を免れない。安全の視点から見ると、海面との相対高度の監視は、船体の1ヵ所で計測するだけでは不十分で、少なくとも主翼両端と胴体の前後位置で監視するシステムが必要と思われる。
(3)姿勢角
姿勢偏差最小を設計目標とした制御システム-2は、制御システム-1に対し横傾斜(φ:Roll角)が1/2となり、縦傾斜(θ:Pitch角)がZeroと大きく効果が表れている。その代償として船首流れ(ψ:Yaw角)を許したため、Yaw角は5倍となり航路から流される量も2倍となった。航行姿勢の偏差最小を目指すのは、接水を避け高度余裕を確保せねばならないが、海面効果のない高度へは上昇できないWISESにとり必要条件であり、また制約でもある。制御システムを設計するに当たり縦連動の安定性を重視したため、どちらの制御システムも縦傾斜(θ:Pitch角)は0.4deg以下と非常に安定した。横連動は海面効果により航空機より安定であるとの見通しから制御システムの設計を行ったが、接水および風に流される量から見て横傾斜(φ:Roll角)と船首流れ(ψ:Yaw角)を安定させることの重要性も明らかになった。
3−4設計目標から見たWISES制御システム
制御システム-1(航路偏差最小)は、制御システム-2より航路保持性能が良いが、一般的に航空機や船舶と比較して計分とは言えない。WISESは航空機とは異なり主として平面内を移動し、対向船など障害物に対する避航は航路変更により行うため、風など外乱の影響に対し計分な航路保持および旋回性能を有することが求められる。
制御システム-2(姿勢偏差最小)は、海面すれすれを航行するWISESの制約から、接水を避けるために姿勢変動を最小にするとの目標に対し、横傾斜(φ:Roll角)と縦傾斜(θ:Pitch角)の減少に大きな効果が得られた。ただし横傾斜は接水を避けるための高度余裕から見ると、さらに安定することが望まれる。横運動は海面効果の中で航空機より安定であるが、高度余裕のないWISESにとって横傾斜と船首流れを安定させることも重要である。
4.まとめ
やや荒天状況に近い海象の中を航行する海面効果真船(WISES)の性能を、航行シミュレーションから検討した。WISESシステムとして見たときの制御システムの重要性を理解するため、2種類の制御システムの比較を試みた。それぞれ設計目標の目指す効果をシミュレーションにより確認したが、実際のWISESが航行する環境から見れば十分とは言えない。
今後はこの結果をもとにWiSESの安全評価法の研究に役立てたい。
[参考文献]
[1]Fuwa,et al, Fundamental study on safety Evaluation of Wing-in-Surface Effect Ship(WISES), 2nd Int.Conf.on Fast sea Trans.(FAST'93),1993.12
[2]堀他、海面効果現象とWISESの特性に関する検討、第64回船所発表会、1994.12
[3]高橋不破、海面効果翼船の設計手法と検討例について、関西造船協会誌No.222、1994.9
[4]不破南、海面効果翼船の特性と連動モデルについて、西部造船会会報No.89.1994.11
[5]角川他、海面効果翼船の航行シミュレーション安全評価、第66回船所発表会、1995.11
[6]角川他、海面効果翼船の設計に関する検討、機械学会第3回交通物流部門大会、1994.12

 

 

 

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